パトカーのサイレンが鳴り響き、燃えさかる街並みを前に「欲をかくものは、全てを失う」と高らかとアジテートするジミー・クリフ。映画は、二大政党JLPとPNPによる激しい抗争の最中、混沌とした熱気に包まれるジャマイカの風景からはじまる。1980年、故郷サマートンでのフリーライブ。丘を重機でならし、ステージを一から作る、ボランティアによる手作りのライブだ。地元愛に溢れた素晴らしい演奏を聴かせてくれる。そして南アフリカのソウェト、ドイツのハンブルグと続くツアーにクルーが密着。16ミリフィルムにその熱狂を収めていく。カルト的人気を得たジミー主演同名映画の楽曲「ハーダー・ゼイ・カム」のほか、日本では車のCM曲で馴染み深い名曲中の名曲「遥かなる河」などセットリストも強力だ。ボブ・マーリーへの敬愛を込めて歌う「ノー・ウーマン・ノー・クライ」も実に美しい。ヒット曲も数多く、ポップな魅力と、キース・リチャーズ、ジョー・ストラマー、マッドネス、ランシド等々ロック界からも溺愛される反骨精神溢れる、絶頂期のジミー・クリフを捉えた貴重なドキュメンタリーだ。
カリブ海の小さな島ジャマイカで生まれたレゲエ・ミュージック。70年代その“ヤバいリズム”はロック界に大きな衝撃を与え、クラプトンやストーンズ等様々なミュージシャンに多大な影響を与えた。そして英国で生まれたパンクロックともrebel music(反逆の音楽)レゲエは激しく共鳴し合い、鬱屈した当時の若者達をたちまち虜にした。戦争、自然災害、貧困、孤独、未曽有の危機が日常になってしまった現代社会でこそ、刺さるヤバいリズムと刺さるメッセージが真理へと導くrebel musicそれがレゲエ。